竜が最後に帰る場所

恒川さんの短編集。恒川さんの本が素晴らしく良いかというとそこまで素晴らしくはないかもしれないけれど、相変わらず読みやすく刺激的だった。夜行の冬はちょっと前に観たフリーホラーゲームの実況で出てくる黒い化け物を思い出させた。孤児院で飢餓に苦しんだ子供たちが沼に生きたまま沈められて怪物になったという話で、夜行の冬で隣の世界に行くまでの夜行で人々の後ろからついてくる怪物がまさにそんなのだった。僕が一番よいと思ったのは鸚鵡幻想曲でこれなんかもちょっと何か類似の話があったような気もするしオリジナルの話な気もする。擬似集合体をほどく快感は何となく読んでるこちら側にも伝わってくる。また、何かこれは他のものとは違うぞ、という違和感の原因として実は擬似集合体だからである、というのは少し現実に怪奇が織り交ぜられているような気がしてきて面白い。恒川さんは以前調べたときに沖縄で塾の先生か何かをしてた気がするのだけど、書いてるものが全く教育的でないのが中々すごいよなと思う。