明日の記憶

荻原浩さんの小説。最後のシーンがあまりにも淋しいような、それでいて多幸感に包まれているような。

人が記憶をなくしていくことは、元からなかったのではなく今まであったものがなくなっていくことは。

記憶が死んでいく様がまた、本人の主観としては若いころをやり直すかのごとく描かれていて、アルツハイマーの多幸感は記憶を失うことであたかも自由になったと錯覚することにあるのかもしれない。

その錯覚が最後、少し奥さんにもうつって二人とも若いころにもどったみたいだった。